はじめてのちゅう

 

3人目のハイネスデューク・ラセツが現われて緊張が走るなか、
ガオズロックで戦士達はひとときの休息をとっていた。
とはいっても、常に警戒は怠らないようにしている。
今はブルーとホワイトの2人が不寝番に立ち、他の3人は自分の部屋で就寝しているはずだった。

**

「でも良かったあ〜。私のファーストちゅうが守られて。」
ラセツに食べられそうになっていたというのに、彼女にとってはそのことの方が重大問題らしい。
「なんだホワイト。ファーストキスもまだなんだ。」
言われて、少女は少しばかりムッとする。
他の戦士達はみんな自分より年上で、だから子供扱いされることも多いのだけれども、今、彼女の目の前にいる青年だけには子供扱いされたくないと思っていた。
「何よ。じゃあブルーはした事あるの?」
精一杯の虚勢をはって言ってみる。
たった2歳しか違わないのに、しかも戦士としては自分の方がちょっとだけ先輩なのに、彼に子供扱いされるのはなんだか理不尽だ。
「もちろん。」
「ウソ!」
「なんでウソだよ。これでも結構もてるんだぞ!」
「だって…」
そうして彼の口元を見る。
改めて見ると、ぽってりした柔らかそうな唇。
あの唇で誰かに触れたんだ…そう思って不愉快になる。
「恋人いるんだ?」
「ばーか。ヤキモチ焼いてるのか?」
軽口をたたいてブルーは彼女の額を小突く。
ふくれる様子が可愛くて、いつも、ついからかってしまう。
それは彼にとっては親愛表現のひとつなのだが、
不毛なことに、恋に恋する彼女には理解される事はない。
ところが、この日の少女の反応はいつもとちがっていて逆に彼は戸惑った。
うつむいてだまりこんでしまった彼女におそるおそる声をかける。
「ホワイト?」
呼ばれた少女は目線だけを上げて彼を見つめる。
「どんな人なの?」
「え?」
「恋人。」
すいこまれそうに大きな目。
ふざけてごまかすことも、話しを逸らすこともできない
「い、いないよ。恋人なんか。」
いくぶん声が上ずってしまったのは問い質す彼女に動揺したから。
「…本当に…ヤキモチ?」

「だって、わたしブルーのこと何も知らないし。」
「俺もホワイトのこと知らないよ?」

そして、お互いを意識したまま沈黙してしまう。
時が停まったような静寂。

先に動いたのは少女の方だった。
顔を上げて彼に近づくと、すばやく彼の唇に自分の唇を重ねた。

「私、ファーストちゅうなんだからね!わかってる?」

彼は呆然としたまま
たった今、自分の唇に触れていった感触を思い返してみる。
あまりに短くて、物足りない。
けど、それは確かにキスと呼ばれるもので。
その意味するところに思い至って、彼女の顔をのぞき込めば、耳まで真っ赤な彼女は今にも泣き出しそうで、彼は苦笑する。

「無理すんなよな。」
そんな顔されたら手が出せないじゃないか。

そして、額にくちづける。
お子様のキス。

「ブルー…」
「2人のときは『海』って呼べよ。」
「うん。海、大スキ」
「オレも。」
そう言って、もういちど彼女の額にキスをする。
そしてふと気付いた。
「あ、オレ、ホワイトに告ったの今はじめてか!?」
「『冴』!もう!」
「普通は順番、逆だろう〜」
組手ばかりか、恋愛まで、冴に先手取られてちょっと情けねーと思いつつ
彼女が笑うから。
「んー、でもまずはオルグを倒さないとね。」
「平和にならないとデートもできないしな。」
そうして、2人いつものように笑いあう。
しばらくは、このままで。


     ***

2人だけ…と思っているのは本人達だけで
実は他のみんなも、隣の部屋でこっそり様子をうかがっていた。
「やっと、カップル成立したか。」
「やれやれ、これだからガキんちょユニットは。」
不寝番にブルーとホワイトが組まされたのも実は周到に仕組まれていたことだったのだが、きっと当人達は気付くことはないだろう。
相思相愛らしい事は明らかなのに、互いに意識してなかなかそれ以上に進展しない2人を見るに見かねてレッドがお節介を焼いたのだ。
ブラックやテトムは諸手をあげて賛成したし、
「ほっておけ」と言っていたイエローも、みんなと一緒にコトの成り行きをうかがっているところをみると、やはり気になってはいたらしい。

「でも、いきなりキスとはホワイトも手が早い(笑)」
「つーか、ブルーが情けないだろ。」
「尻に敷かれるタイプだよな。」
口々にこきおろしながらも見守る目が優しい。
翌朝、2人がどんな様子で自分達と顔を合わせるのか。
それを楽しみにしながら、彼らはしばしの休息に就いた。

次の朝、何があったのかはまた別の話である。





QUEST32の「私のファーストちゅうがこんな奴じゃイヤー!」
が可愛かったので(笑)
冴ちゃん、誰とだったらファーストキスしてもいいのよ!?
というところから入ってみました。
相手を海君にしたのは、一番美味しそうな唇してたから♪(爆)
あまり深く考えずに書いたんだけど、意外に王道CP?
つーか青黒のほうが王道…ゲフゲフッ…いや、なんでも…(笑)






 

 

 

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