贈り物 

慶国、暁天。
金波宮の一角に、宰輔の自室はある。
その部屋の露台に、
今は、金の髪を持つ二人の人物の姿があった。

「主上におかれては、最近ご気分がすぐれないご様子。
心配無用と仰るのだが、どうも、蓬莱を懐かしんでおられるらしい。
そこで、蓬莱の縁の品でもお贈りすれば、少しでも慰めになるかと思うのですが…
如何なものでしょう?」
問いを発したのは、この部屋の主である慶国の宰輔、景麒である。
これに答えたのは、延国の宰輔。
すすめられた椅子を断って露台の手摺りに腰掛けている。あまり行儀はよろしくないようだ。
「いいんじゃねえの?」
「それで、俺に蓬莱に行って欲しいって?」
「私が蓬莱に行っても、存在が希薄であれば買い物などできませんので。」
「しかたないな。頼まれてやるよ。」
口ではしかたない、と言っても蓬莱に遊びに行けるとなれば延麒の態度は嬉々としている。
それを、複雑な気持ちで見やりながら景麒は深々と頭を下げた。




「服とかでもいいんだけど、こっちの服って布地が少ないから、陽子は喜ぶだろうけど景麒の奴は渋い顔しそうだよなあ…。
ってことは、食いモンとかの方が良いのか。」
そんなことを考えながら、延麒六太は東京の雑踏の中をうろついていた。
ふと、一軒の店の前で足を止める。
「ああ!これなら景麒も納得するかも。陽子は…どうだろうな。喜ぶか困惑するか…
うん、おもしろそうだからこれにしよう。」
そう言って、六太はかなり場違いなその店に足を踏み入れた。



「と、まあそう言うわけで、買ってきたぞ。」

州城での執務中の景麒の元に、大きな荷物を抱えた延麒がやってきたのは、
先に景麒と延麒が話をしてから、1ヶ月近く経ったころの事だった。
「まだ執務中なのですが、延台輔?」
自分が頼んだ事なので、咎めるに咎められず少し困った様子の景麒。
「気にすんなって。仕事終るまで仁重殿の方で待ってるからよ。
お前にこれを見せる前に陽子に見つかったらまずいだろ。」
そう言われても、一国の台輔をあまり待たせるわけにもいかないので、
とりあえず急ぎの裁可だけは済ませると、景麒は自室へと急いだ。

「こっちは蓬莱の菓子類。前に陽子が好きだって言ってたやつだな。
そんで、これが蓬莱の服ね。陽子に似合いそうなのを選んだつもりだけど。」
景麒はその美しい色とりどりの布の山にしばし目を奪われた。
「これが蓬莱の服ですか?しかし、以前蓬莱に行った時にはこのような衣装をを着ている者など見かけませんでしたが…。」
「まあ、ちょっと一般的ではないかもな。」
「それで、主上がお気に召すものでしょうか?」
言って景麒は顔を曇らせる。
目の前の衣装は素晴らしいものではあったが、主は豪華な衣装ほど嫌がる性質なので、蓬莱のものとはいえ、気に入るかどうか疑問が残る。
「ま、嫌いってことは無いと思うぜ?」
そう言って延麒は悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「なんだったら、今すぐ陽子を呼んでこいよ。」

景麒は半信半疑で、主の元に向かうと、
延台輔がお見えになっております。
と、告げて主に付き従って仁重殿に戻ってきた。
「よう、久しぶり。」
「お久しぶりです。延台輔。
今日はどうなさいましたか。」
「ちょっと蓬莱に行ってきたからな。土産持ってきた。」
そう言って、延麒は菓子の包みを差し出した。
「ああ!モロゾフのチーズケーキに、フレイバーのエンゼルケーキ!
大好きだったんですよ!これ!どうも、ありがとうございます。
祥瓊や鈴達といただきますね♪」
「それとな、陽子が元気が無いからって、景麒のやつが蓬莱の品を贈りたいって言うからさ、それもな。」
「ええ!?」
陽子は後ろに控えていた景麒を振り向いた。
「主上は蓬莱を懐かしんでいることを隠されようとなさいますが…
臣下へのしめしがつかないと思っているのでしたら、
無理をなさらずともよいのではないでしょうか。」
相変わらず表情は変わらないが、景麒の誠実さが伝わってくる。
「それで、わざわざ蓬莱まで延台輔に買い物を頼んだのか?」
「…はい。」
その不器用な心遣いが嬉しいようなくすぐったいような、落ち着かない気がして陽子は少しだけ泣きたくなった。
「心配かけてごめんな。もう忘れるから」
それが真実ではない事はわかっている。
だから…
「無理に隠さないように、と申し上げた。
懐かしいなら、わたしに仰ってください。
主上の育ってきた国のことを理解できるよう、私も努力いたします故。」
常ならぬ、優しい言葉にふと心が緩む。
「帰りたいと言い出すかもしれないぞ。」
「それは…ご勘弁いただきたい。」
いつも通りの口調に、思わず苦笑が洩れた。

「服なんだけどな。奥の部屋に置いてあるぜ。」
それまでだまっていた延麒が口を挟む。
「服?それは…」
それは意外な贈り物だ、と思った。
向こうの服はこちらの常識で言えばかなりみすぼらしい物らしいので、景麒がそれを良しとするとは思えない。
「延台輔の一存ですか。」
景麒と延麒を見比べて、陽子はわずかばかり苦笑をもらした。
「見立ては俺だけどな。景麒も良いって言ったぜ。な?」
延麒はニヤリとして隣の景麒を見上げる。
景麒は複雑な顔をしていた。
「それはそうですが…」
その様子を陽子は不審に思ったが、とにかくその贈り物を確認しようと奥の部屋へと入る。
そして、そこにある服を見て息を呑んだ。
「景麒、これ…」思わず絶句する。
「蓬莱ものではありますが、主上のお気に召すかどうか…」
「景麒はこれがどういう物か知っているの…?」
「?延台輔は一般的な服ではないとおっしゃっておりましたが。」
「そう…」
陽子はそう呟くと、1着の白い服を手に取った。
その、常ならぬ主の様子に、景麒は心配になる。
やはりお気に召さなかったのだろうか。それとも、凶事の色だからか?
陽子は手に取った服を体にあて、恥じらうような笑顔で景麒を振り返った。

「これは、蓬莱の婚礼衣装なんだ。」

それは、純白のウエディングドレスだった。

「婚礼衣装!?」
「そう、婚礼衣装。」
答えたのは、後から部屋に入ってきた延麒だった。
「お、よく似合ってるじゃん。」
「ありがとうございます。延台輔。」
「俺の見立ても捨てたもんじゃないな。どうだ景麒?」
「おまえも気に入ってくれた物なんだろう?似合ってる?」
蓬莱の基準がわからないので断言しずらい。
それでも、似合っている…と思えた。
何よりも、主のその嬉しそうな笑顔がまぶしかった。
「似合っているとは思いますが…」
歯切れの悪い言い方に陽子の顔から笑みが消える。
「何だ?景麒は不満か?私はすごく嬉しかったのに…」
潤んだ瞳。今にも泣きだしてしまいそうな主の様子に景麒は慌てる。
「婚礼衣装だとは思いませんでしたので。
折角の衣装ですが、お召しになる機会が無いのでは…」
見上げてくる王に溜息で答える。
「お似合いだからこそ、もったいない…」
「王は結婚できないものな。」
「でも、おまえのプレゼントなんだから、責任取れよ景麒。」
「えっ?」
その真意を測りかねていると
後ろから延麒の笑い声。
「そりゃあいい。
実は景麒にも用意しておいたんだぜ?こっちは紋付袴。」
その言葉の意味することに気が付いて景麒はうろたえる。
困惑しながらもどこかで嬉しく思っている自分がいる。
「それは、あの…?」
そんな僕に陽子は優しく微笑みかけた。


「おまえがいるから、蓬莱に帰りたいなんて思わないってことだよ。
だってもう、私達誓約済みなんだから!本当に責任とってもらわないとな。」



陽子ちゃんの性格がイマイチ決定してません(汗)
やっぱり12国は自分で書くより人様のを読むほうが良いなあ…
慶主従のラブラブは自分じゃ絶対無理だという事がよく分かりましたよ。

文章書くのは苦手だけれど、
このネタはマンガで描くより文字向きだと思ってがんばったんだけどなあ…って誰に言ってるのか(笑)



 

 

 

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