「寒い」
ついもれてしまったつぶやきを彼は聞き逃さなかった。 「オープンカフェでアイスクリームなんて食べてるからですよ。」
この寒いのに。そう呟く彼を横目でにらむ。 だってあそこのバニラは絶品なんだもの。 そう反論しようとしたら彼にすっぽり抱きしめられた。 「少しはあったかいでしょう?」 確かにあったかいけど。 それ以上に身体の内側から熱くなるようで。 あわてて「手が冷たい」と言ったら 大きな手が私の手を包み込んだ。 「顔も。風に当たってたから…」
今度は少し確信犯。
彼はどうしてくれるだろう? 次の瞬間、感じたのは頬にかかる息とさらに熱くなる体と。 続けて時が止まったような静寂
「唇も冷たいですよ。」
「だから!さっきアイス食べたから!!」
伝わった温もりはコーヒーの香りがして、 余韻はバニララテのようだった。
|