純白の桜−ムクノハナ−

春−桜の開花宣言もだされ、酔っ払い対応で忙しい時期ではあるが
未確認生命体対策班にはあまり関係はない。
それでも、今まで後まわしになっていた未確認生命体(アンノウン)のデータ解析やら整理といった雑務に煮詰まっていた小沢は
「気分転換にでも行きましょ。」と、部下の氷川を連れて外へ出た。
ここ数日で急に春らしくなった陽気のせいで、警視庁敷地内内に植えられた桜の木もだいぶ花を咲かせている。
花見のつもりはなかったが、二人はなんとなく桜の木に沿って歩いていた。

 

 

「桜の木下には死体が埋まってる…」

 

 

突如として小川の口から出た言葉に、とくに意味を求めずに氷川が返す。
「坂口安吾ですか?」
「そう、ね。もとは梶井基次郎だったと思うけれど。
その血を吸い上げて薄く色づいてるって言ったのは彼だったかしら?」
そこで、ふと彼女の足が止まる。
「私達の頂く桜も多くの血を吸ってこそ、咲き誇ることができる。」
なんのことかわからず首を傾げる氷川に彼女は笑って後の建物を振り返った。
見ると、そこには桜をモチーフにした警視庁のシンボル。
ああ、と思い彼女に視線を戻すと、険しい表情でその桜のシンボルを見つめながらそっけなく呟く。
「凶悪犯を捕らえること、アンノウンを撃破すること。それが多ければ多いほど警察の威信も高まるんでしょうね。」
やや間をおいてさらに続ける。
「でもそれは凶悪犯の、ひいては彼らが犠牲にした被害者達の血を吸い上げて美しく薄紅色に色づく桜の花みたい。
美しければ美しいだけ、それに見合っただけの命を養分にしてるんだわ。」
その不吉な言葉に、氷川はとっさ異を唱えた。
「警察の仕事はそれだけじゃないでしょう。」
その強いちょうしに少し驚いて小川は彼を振り返る。
「市民の生活と生命の安全を守る事が僕達の努めでしょう?
香川県警に所属していた頃、僕が巡査として勤めていたのは凶悪犯もアンノウンも関係ないような小さな町でしたけど
それでも、確かに町の人から信頼されてた自信はありますよ。」
香川の田舎町で巡査をしている氷川はとても容易に想像できた。
自転車で町の人から声を掛けられながらパトロールして、人々の笑顔が何よりの誇りで。
アンノウンと戦っている今でもきっとその本質は変わらないのだろう。
「ああ…そうね。そう…あなたならきっとそう。」
そうして再び桜に沿って歩き出した小川の後を、不吉な思いを胸にしたまま彼はついていく。

 

1本、離れたところに白い花を咲かせている木があった。
「これ、桜ですかね?ずいぶんと色の薄い…」
「血の色に染まらない白い桜か…」
氷川のようだ、と小川は思った。
「まだ、そんな事言ってるんですか?」
あきれて言う彼を振り返って微笑む。
「白い花には白い花の美しさがあるわよね。」
薄紅の花に慣れてしまった自分には少しまぶしくって目にいたいけれども。

「さて、仕事に戻りましょうか。」
「あ、はい。」

 

 

 

 

 

あなたはきっと汚れた土壌でもひときわ異彩を放つ純白の桜。(むくのはな)



いつまで?

 

書きかけたまま、桜の時期にUPしそこなって放置されてたモノ。
毎年桜の時期過ぎてから思い出しては後悔してたので。
今年は桜の開花が遅いので間に合いました(笑)

しかっし、本当に氷川誠に夢見てるね。(苦笑)


 

 

 

SEO [PR]  ローン比較 再就職支援 バレンタイン 無料レンタルサーバー SEO